むかーしむかし
京都の桂離宮近くに豊(ゆたか)おじいちゃんとスミおばあちゃんが住んでいました。
“世のため・人のため”という思いを込めて
二人は小さな作業場でごま屋を始めることにしました。
スミおばあちゃんはいつも土間に小さな木箱を置いて座り、鉄鍋に胡麻を入れ、手箒を使って、ゆっくり丁寧に時間をかけて炒っていました。
そして大きな石臼を回しながら、小さな穴へ少しずつ、少しずつ胡麻を入れていきます。
しばらくすると上臼と下臼の間から、トロ~リなめらかなペーストの『ごまねりねり』が出てきます。
それを木ベラで優しくすくい取って、一斗缶に集めるのです。
はじめは豊おじいちゃんが作っていました。
でもせっかちな豊おじいちゃんは気長に少しずつ胡麻を入れることが出来ません。
だからきめが粗く、甘みや食感が悪い練りごまが出来てしまうのです・・・
“世のため・人のため”モノ作りに一切の妥協を許さない二人。
豊おじいちゃんには任せておけない!とスミおばあちゃんが一人で作りはじめました。
穏やかで優しく、粘り強いスミおばあちゃんはゆっくり丁寧にほんの少しずつ胡麻を入れ、気長に丁寧に仕上げていくので、甘くてきめ細かいトロリなめらかな練りごまが完成します。
こうしてごま屋の『ごまねりねり』は完成しました。
『ごまねりねり』という名前はスミおばあちゃんの胡麻に対する丁寧な姿勢や、優しいけれど粘り強い仕事ぶりを長い長い年月が流れても受け継ぎたいという思いで名付けました。
手取り足取り教えてもらったわけではないけれど、体と感覚そして思い出と記憶で次の世代へと受け継がれています。
スミおばあちゃん特製『ごまねりねり』の作り方や思いは、これから先もずっと受け継がれていきます。